案件ごとの情報が散らばると、探す時間と抜け漏れが増える
案件管理をシステム化する一番の理由は、案件ごと・現場ごとの書類ややり取りを1か所で見られるようにすることです。進み具合の管理は、その上に乗るものだと考えたほうがうまくいきます。
多くの中小企業では、1つの案件の情報があちこちに分かれています。見積はExcel、発注はFAXと電話、現場の写真は担当者のスマホ、お客様との連絡はLINEやメール、請求は会計ソフト。どれも単体では回っているので、普段は問題に見えません。
困るのは、誰かが全体を知りたいときです。たとえば社長が夜、事務所で翌日の段取りを考えている。「あの現場、材料の発注は済んだっけ」と思っても、FAXの控えを探し、担当者にLINEで聞いて、返事を待つしかありません。
現場が10件を超えたあたりから、この確認だけで毎晩30分、1時間と取られるようになります。
散らばっていることで起きる問題は、だいたい次のどれかです。
- 案件の今の状況を、担当者に聞かないと分からない
- 見積の金額と請求の金額が合っているか、毎回手で照らし合わせている
- 発注の漏れや二重発注に、現場で気づく
- 現場の写真が個人のスマホにあり、後から探せない
- 請求を出し忘れた案件が、月末や決算の時期に見つかる
- 担当者が休むと、その人の案件は止まる
もう1つよくあるのが、追加の仕事の取りこぼしです。現場で「ついでにここもお願い」と頼まれ、職人さんが口頭で引き受ける。
その話が事務所に伝わらないまま、最初の見積の金額で請求書が出てしまう。後から気づいても、お客様に追加の請求をお願いするのは言い出しにくいものです。
「進捗管理ができていない」と感じているとき、実際には進み具合より先に、情報の置き場所が決まっていないことが多いんです。
1か所に集めるのは「案件の基本情報・書類・やり取り・お金」
1か所に集めるものは、案件の基本情報、見積や発注などの書類、お客様や業者とのやり取り、お金の流れの4つが基本です。全部を一度に集めなくてもかまいません。困りごとの大きい順に寄せていきます。
| 集める情報 | よくある今の置き場所 | 集めると変わること |
|---|---|---|
| 案件・現場の基本情報 | Excel、ホワイトボード | 一覧で全体が見える |
| 見積・発注・請求 | Excel、FAX、会計ソフト | 金額の食い違いに気づける |
| 写真・図面 | 個人のスマホ、紙 | 案件から探せる |
| お客様とのやり取り | 電話、LINE、メール | 誰が見ても経緯が分かる |
| 予定・期日 | 手帳、カレンダー | 期日前に気づける |
このとき決めておきたいのが「案件の単位」です。工事なら現場ごと、制作の仕事ならご依頼ごと、保守の仕事なら契約ごと。単位が決まれば、書類もやり取りもその案件にひもづけるだけになります。
最初から集めなくていいもの
過去の案件を全部移そうとすると、それだけで何週間もかかります。最初は進行中の案件と、これから始まる案件だけで十分です。終わった案件は、必要になったときに探せる場所に置いておけば困りません。
会計の細かい処理も、最初から案件管理に取り込む必要はありません。請求を出したか、入金があったかが分かれば、案件管理としては足ります。
ポイント
顧客管理と案件管理は似ていますが、主役が違います。お客様が主役なら顧客管理、1つ1つの仕事が主役なら案件管理です。同じお客様から何度も仕事を受ける会社では、「お客様の下に案件がぶら下がる」形にしておくと両方を見られます。
顧客情報の扱いで迷っている場合は、Excelの顧客管理が限界になるサインも参考になると思います。
ステータスは5〜7個に絞り、次に誰が動くかで決める
ステータス(案件の進み具合を表す段階)は、細かく分けすぎないことが一番のコツです。目安としては5〜7個。それぞれの段階で「次に誰が何をするか」がはっきりしていれば足ります。
たとえば工事の仕事なら、次のような分け方がよく使われます。
| ステータス | 次に動く人 | 次の行動 |
|---|---|---|
| 問い合わせ | 営業・社長 | 現地調査の日程を決める |
| 見積提出済み | お客様 | 返事を待つ・期日に確認 |
| 受注 | 現場責任者 | 材料の発注と日程の確定 |
| 施工中 | 現場 | 写真と進み具合を記録 |
| 完了・請求待ち | 事務・社長 | 請求書を出す |
| 入金済み | なし | 案件を閉じる |
社長が朝、一覧を開いて「完了・請求待ち」に3件たまっているのを見れば、その日のうちに請求書を出せます。ステータスは、見た人が次の行動を取れるかどうかで良し悪しが決まります。
ステータスを増やしたくなるのは、細かく分ければ管理が行き届くと思うからです。実際には、段階が多いほど更新が面倒になって、現場の方が触らなくなっていきます。
ステータスを決めるときの手順
机の上で考えるより、最近終わった案件を3件ほど思い出して、問い合わせから入金までに何が起きたかを時系列で書き出すほうが早いです。書き出したら、「ここで担当が変わる」「ここでお客様の返事を待つ」という切れ目に線を引きます。その切れ目が、そのままステータスになります。
あわせて、ステータスを誰が変えるのかも決めておきます。変える人が決まっていないと、全員が「誰かがやるだろう」と思って、表示が実態から遅れていきます。
注意
「保留」「その他」のような行き先のないステータスは、案件の吹きだまりになりがちです。作るなら、いつまでに見直すかを一緒に決めておいてください。
スマホで現場から入力できるかどうかで、使われ方が決まる
現場に出ている時間が長い仕事なら、スマホから入力できることは必須の条件です。事務所に戻ってからパソコンで入力する仕組みは、忙しい日から順に入力されなくなります。
職人さんが現場の休憩中に、写真を2枚撮って「基礎完了」のボタンを押す。これくらいの手間なら続きます。逆に、項目が10個並んだ画面に文字を打ち込むのは、現場では無理があります。
現場からの入力を続けてもらうための工夫
- 入力する項目を、その場で必要なものだけに絞る
- 文字を打つより、選ぶ・押す・撮るで済むようにする
- 写真は撮ったその場で案件にひもづくようにする
- 電波の弱い現場も想定して、入力がやり直しにならない作りにする
- 現場の方がふだん使っているアプリ(LINEなど)から入れる形も検討する
事務所の側では、パソコンの大きな画面で案件を一覧にして見られるほうが便利です。現場ではスマホで1件ずつ、事務所ではパソコンで全体を。同じ情報を、使う場所に合わせた見せ方にしておくと、どちらの人にも無理がありません。
特に最後の点は効きます。新しいアプリを覚えてもらうより、いつも使っているLINEから報告できるほうが抵抗が少ないことが多いです。公式LINEとシステムをつなぐやり方は、LINEでの問い合わせ対応の記事でも触れています。
通知を決めると、システムを見に行かなくても抜けに気づける
通知は「誰かが見に行かないと気づけない」状態をなくすためのものです。情報を1か所に集めても、毎日開いて確認する人がいなければ、抜け漏れは減りません。
通知のきっかけになりやすいのは、期日、ステータスの変化、お客様からの連絡の3つです。
| きっかけ | 通知の例 | 受け取る人 |
|---|---|---|
| 期日が近い | 見積の回答期限が明日 | 営業・社長 |
| ステータスが変わった | 施工完了になった | 請求担当 |
| お客様から連絡が来た | LINEで写真が届いた | 案件の担当者 |
| 一定期間動きがない | 受注から1週間発注なし | 現場責任者 |
気をつけたいのは、通知を増やしすぎることです。毎日何十件も届くと、誰も読まなくなります。最初は「これを見落とすと損をする」ものだけにして、運用しながら足すくらいがちょうどいいと思います。
通知をどこに届けるかも決めておきます。メールは見落とされやすく、現場の方にはLINEのほうが届きやすいことが多いです。社長には毎朝1回、今日の期日と動きのない案件をまとめて届ける、という形もよく使われます。
ポイント
「施工完了になったら請求担当に知らせる」のように、ステータスの変化と次に動く人をつなげておくと、請求漏れが起きにくくなります。案件管理と請求をつなげる考え方は請求書作成の自動化でも書いています。
事例:事務員のいない外構工事会社で現場台帳を中心にまとめた
LaughRallyでは、外構工事の会社向けに、現場台帳を中心とした管理システムを作りました。案件の単位を「現場」に置き、見積・発注・請求を現場ごとにまとめて扱える形にしています。
LaughRallyの事例
事務員を置いていない外構工事の会社で、現場台帳と、見積・発注・請求の一元管理の仕組みを作りました。お客様とのやり取りには公式LINEを連携させています。初期費用は78万円です。
事務員がいない会社では、書類づくりや確認作業が社長や現場の方に乗っかります。昼は現場、夜は書類という働き方になりやすいので、こうした会社では入力の手間を減らすことと、現場ごとに情報を探さずに見られることを優先して考えます。
現場台帳を中心にする場合、最初に決めるのは「1つの現場に何がぶら下がるか」です。見積書、発注書、請求書、写真、お客様とのやり取り。これらを同じ現場の画面から開ける形を目指します。
外構工事に限らず、リフォーム、設備工事、内装など「現場」が仕事の単位になる業種には、同じ考え方がそのまま使えます。ほかの事例は事例のページにまとめています。
既製の案件管理サービスで足りる会社、足りない会社
案件の流れが一般的で、見積や請求を別のソフトで済ませて困っていないなら、既製の案件管理サービスやタスク管理のサービスで足りることも多いです。まず試用期間で使ってみて、無理がないかを確かめるのが近道です。
足りなくなりやすいのは、次のような場合です。
- 案件の単位が「現場」「物件」など、業種に特有のもの
- 見積・発注・請求を案件と一緒に扱いたい
- お客様とのやり取りを公式LINEで受けて、案件にひもづけたい
- 現場の方が使える画面を、とことん簡単にしたい
こうした条件が重なるほど、既製のサービスに合わせる手間が増え、自社専用の仕組みのほうが結果的に楽になります。比べ方の詳しい考え方は顧客管理システムの選び方で書きました。
費用の目安と進め方
案件管理のシステムは、規模にもよりますが50万円からが目安で、期間は1〜3か月です。いきなり全部を作らずに1つの業務から始めるとこの範囲に収まりやすくなります。
- 困りごとを1つ選ぶ請求漏れ、発注の確認、写真の整理など、いちばん痛いものを1つ選びます。
- 案件の単位とステータスを決める現場ごとか、ご依頼ごとか。ステータスは5〜7個に絞ります。
- 小さく作って使ってみる途中で動く画面を見ていただき、現場の方にも触ってもらいます。
- 使われたら広げる定着したのを確かめてから、見積や通知、LINE連携などを足していきます。
最初の1業務に何を選ぶかは、会社によって違います。請求漏れが一番痛い会社なら「完了から請求まで」、発注の確認に追われている会社なら「受注から発注まで」。全体の流れを先に図にしておき、その中の1区間から作ると、後で広げるときにもつながりが崩れません。
途中の確認では、社長だけでなく、実際に入力する現場の方や、請求を担当する方にも画面を触ってもらいます。「このボタンは手袋をしたままだと押しにくい」といった話は、実際の利用者からしか出てこないからです。
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