社内FAQ向けと問い合わせ一次対応向けは、何が違うのか
同じAIチャットボットでも、社内FAQ向けは「社員が調べる手間を減らす道具」で、問い合わせの一次対応向けは「お客様を待たせない受付」です。使う人も、間違えたときの影響も違うので、準備するものと作り方が変わります。
社内向けなら、多少ずれた回答が出ても、聞いた社員が「あれ、違うな」と気づけます。お客様向けはそうはいきません。間違った案内がそのまま信じられて、あとから訂正の連絡を入れる手間が生まれます。
| 比べる点 | 社内FAQ向け | 問い合わせ一次対応向け |
|---|---|---|
| 使う人 | 社員 | お客様・見込み客 |
| よく来る質問 | 経費精算、休暇の申請、社内ツールの使い方 | 料金、営業時間、対応エリア、申込み方法 |
| 間違えたときの影響 | 社内で気づいて直せる | 誤った案内がそのまま伝わる |
| 答えられないとき | 担当部署に直接聞いてもらう | 担当者に通知して折り返す |
| 最初の公開範囲 | 一部の部署から | 社内で試してから公開 |
私たちは、1つ目は社内FAQ向けをすすめることが多いです。社員に使ってもらいながら答え方のクセや資料の抜けを見つけ、直してからお客様向けに出す。遠回りに見えて、結果的には早いんです。
とはいえ、問い合わせの一次対応で本当に困っている会社もあります。夜に届いた質問が翌朝まで放置され、そのあいだに他社へ問い合わせが流れてしまう。こういう悩みが強いなら、最初からお客様向けで始めて、AIが答える範囲を狭く絞るやり方もあります。
そもそもAIチャットボットが向かない場面
質問の数が少ない会社では、AIチャットボットを入れるより、よくある質問のページを1枚作るほうが早いことがあります。月に数件しか来ない質問のために資料を整え、記録を見直すのは割に合いません。
答えが毎回変わる相談も向きません。現地を見ないと金額が出ない工事や、事情を聞かないと判断できない相談は、AIに答えを出させるより、必要な情報を聞き取って担当者に渡す形のほうが合っています。
ポイント
どちらから始めるか迷ったら、「間違えたときに誰が困るか」で決めると判断しやすくなります。困るのが社内だけなら、使いながら直していけます。
回答の元になる資料は、何をどう準備するか
AIチャットボットの回答の質は、元になる資料でほぼ決まります。資料に書かれていないことを聞かれると、AIは「分かりません」と返すか、悪くするともっともらしい作り話を返してくる。だから資料が先なんです。
準備というと大がかりに聞こえますが、最初は今ある資料を集めるところからで足ります。集めるものの目安はこんな感じです。
- よく聞かれる質問と、いつも返している答え(担当者の頭の中にしかないものも書き出す)
- 料金表、サービス内容、営業時間、対応エリアなどの基本情報
- 社内規程、マニュアル、申請の手順書
- 過去の問い合わせメールやLINEのやり取りのうち、何度も来ている質問
- AIに答えさせたくないことの一覧(個別の金額、契約の可否、他社の評価など)
資料を整えるときのコツ
いちばん効くのは、古い情報を消すことです。改定前の料金表と改定後の料金表が両方残っていると、AIはどちらを使って答えるか分かりません。人なら日付を見て新しいほうを選べますが、AIにはその判断がつかないことがあります。
「あの人に聞けば分かる」という知識も、文字にしておきます。たとえば総務の担当の方が、毎月の締め日前になると何人もの社員から「経費の締め日はいつですか」「領収書をなくしたらどうすれば」と聞かれている。その答えが担当者の頭の中にしかないと、AIには渡せません。
書き出すときは、きれいな文章にする必要はありません。質問と答えを1行ずつ並べたメモで十分です。AIが読みやすいかどうかより、内容が正しくて新しいかどうかのほうがずっと効きます。
資料の持ち主を決めておく
見落とされやすいのが、資料を誰が更新するかです。料金や営業日が変わったのに資料が古いままだと、AIは古い情報で答え続けます。
料金表は営業の担当、社内規程は総務、というように持ち主を決めておき、何かを変えたらチャットボットの資料も一緒に直す。この流れを最初に作っておくと、運用が崩れにくくなります。
注意
お客様の個人情報や社外秘の資料をAIに渡す前に、使うAIサービスの設定と利用規約を確認してください。入力した内容が学習に使われない設定や、法人向けのプランがあるかどうかはサービスごとに違います。
AIチャットへの入力から情報が漏れる仕組みや防ぎ方は、私たちが運営しているAIセキュリティのeラーニング「AI Security Lab」でも扱っています。
AIが間違えたときの設計は、導入前に決めておく
AIチャットボットは、どこかで必ず間違えます。だから導入の前に「間違えにくくする工夫」と「間違えたときの逃げ道」の両方を決めておくと、公開してから慌てずに済みます。
間違えにくくする工夫
- 資料に書いていないことは「分かりません」と答えるように指示しておく
- 金額、日付、契約の可否など、外すと困る質問はAIに答えさせず担当者に回す
- 回答の最後に、元になった資料の名前を添える
- 質問の言い回しを変えても同じ答えになるか、公開前に試しておく
間違えたときの逃げ道
お客様向けなら、回答の下に「解決しなかった場合は担当者へ」というボタンを置きます。社内向けでも「この答えはおかしい」と報告できる仕組みがあると、資料の誤りや抜けがすぐ見つかります。
やり取りの記録を残すことも欠かせません。どんな質問が来て、AIがどう答えたかを後から見返せれば、週に1回ほど目を通して資料を足したり直したりできます。
公開したまま放っておくと、資料が古くなって答えがずれ、だんだん使われなくなります。見直しの担当と曜日を決めておくのがおすすめです。
ポイント
「AIが答えない範囲」をはっきり決めておくと、答える範囲の回答は信用してもらいやすくなります。何でも答えようとするチャットボットほど、一度の間違いで使われなくなります。
人への引き継ぎは、どう作ればよいか
人への引き継ぎは、「どんなときに」「誰に」「何を添えて」渡すかを決めれば作れます。ここが曖昧なままだと、AIが答えられなかった質問が誰にも拾われず、お客様を待たせたままになります。
よくある失敗は、「詳しくは担当者にお問い合わせください」と返して終わる形です。お客様からすると、もう一度電話やメールで最初から説明し直すことになる。これでは自動にした意味が薄れてしまいます。
| 引き継ぐ場面 | 渡す相手 | 一緒に渡すもの |
|---|---|---|
| 資料から答えが見つからない | 窓口の担当者 | 質問の全文とそれまでのやり取り |
| 見積もりや個別の金額を聞かれた | 営業の担当者 | 名前、連絡先、希望の内容 |
| 不満や苦情が含まれている | 責任者 | やり取りの全文 |
| お客様が「人と話したい」を選んだ | その日の当番 | 連絡がつきやすい時間帯 |
通知の先はメールでも社内チャットでも、公式LINEでも構いません。肝心なのは、通知を受けた人がその場で状況をつかめること。やり取りの全文がついていれば、お客様に同じことを聞き直さずに折り返せます。
営業時間外の扱いも決めておきます。夜9時に届いた相談に「翌営業日の午前中に担当者からご連絡します」と返すだけでも、お客様の安心感はずいぶん違います。LINEでの受付と組み合わせる場合は、公式LINEで問い合わせ対応を自動化する方法も参考になると思います。
AIチャットボット導入の手順
導入は、使う場面を1つに絞って小さく始め、記録を見ながら広げていく順番が確実です。最初から全部の質問に答えさせようとすると、資料の準備だけで止まってしまいます。
- 使う場面を1つ決める経費精算の質問、料金についての問い合わせなど、質問の数が多く、答えが資料にまとまっている場面を選びます。
- 資料を集めて整えるよくある質問と答え、基本情報、答えさせたくないことの一覧をそろえ、古い情報を消します。
- 答える範囲と引き継ぎを決めるAIが答える範囲、担当者に回す条件、通知先と折り返しの目安を決めます。
- 社内で試す社員がお客様役になって質問を投げ、答えのずれや資料の抜けを洗い出します。
- 範囲を限って公開する社内なら一部の部署、お客様向けなら特定のページだけなど、範囲を絞って公開します。
- 記録を見て直すやり取りの記録を定期的に読み、資料を足したり、答える範囲を広げたり狭めたりします。
手順4の社内テストは飛ばされがちですが、問題がいちばん多く見つかるのはここです。言い回しを少し変えただけで答えが変わる、社内の略語が通じない、といったことは実際に使ってみないと分かりません。
社内テストで投げておきたい質問
- 資料にそのまま答えが書いてある、いちばん素直な質問
- 同じ内容を、くだけた言い方や略語で聞いた質問
- 資料に答えがない質問(「分かりません」と返せるか)
- 金額や契約の判断を求める質問(担当者に回せるか)
- 不満や怒りがにじむ書き方の質問
現場の方に5〜6人ほど協力してもらい、それぞれ普段の言葉で質問してもらうと、作った側が想定していなかった聞き方がたくさん出てきます。ここで出た質問は、そのまま資料に足していけるので無駄になりません。
LaughRallyでは、開発の途中で実際に動く画面を見ていただきながら進めています。答え方の調整は、会議室で議論するより、画面に質問を打ち込みながら「この返し方は硬いね」と話すほうがずっと早く決まるものです。
事例 FP事務所専用のAIシステム
相談業のように「最初の説明」に時間を取られている業種は、AIチャットボットと相性がいいと感じています。私たちが作ったFP事務所専用のAIシステムも、その一つです。
LaughRallyの事例
FP事務所向けに、事務所専用のAIシステムを開発しました。AIチャット、通知、やり取りの一覧、管理画面をそろえた形です。
一般に、FP事務所への最初の問い合わせは聞かれる内容がある程度決まっています。どんな相談ができるのか、相談の流れはどうなっているのか、何を準備しておけばよいのか。こうした質問にAIが先に答えておけば、担当者は個別の相談そのものに時間を使えます。
相談業でAIチャットを使うなら、お金に関わる個別の判断は人が行う前提にして、AIの役割は受付と下調べまでにしておくのが無難です。やり取りが一覧で残っていれば、担当者は相談者が何に困っているかを読んでから話を始められます。
士業の事務所、保険や不動産の窓口、スクールの入会案内なども、似た形がそのまま使えると思います。ほかの事例は事例のページにまとめています。
費用の目安と進め方
AIチャットボットの費用は、1つの業務に絞った仕組みにするか、管理画面や通知まで含めた専用のシステムにするかで大きく変わります。LaughRallyでの目安はこちらです。
| 作るもの | 費用の目安 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1業務に絞った自動回答など | 3万〜5万円 | 1〜2週間 |
| 管理画面・通知つきの専用AIシステム | 50万円〜 | 1〜3か月 |
| 導入後の見直しと調整の伴走 | 月5万〜15万円 | 継続 |
はじめての導入なら、1つの場面に絞って小さく試すのがおすすめです。実際に使われると分かってから、管理画面をつけるか、ほかの業務に広げるかを考えても遅くありません。
どの質問から自動にするか、社内向けとお客様向けのどちらから始めるかで迷っているなら、無料の業務診断(60分・オンライン)で一緒に整理します。自動化できそうな業務を一覧にしてお渡しするもので、売り込みはしません。先におおよその金額を知りたいときは、見積もりシミュレーターも使えます。