ChatGPTやClaudeを業務で使うときの基本の考え方
業務で使うときは、ChatGPTやClaudeを「下書きを作る係」と考え、最後は必ず人が確認して仕上げるのが基本です。文章の案や要約、表の整理は速く作れますが、内容が正しいかどうかの判断までは任せられません。
生成AIは、聞かれたことにそれらしい文章で答えるのが得意です。そのぶん、事実と違うことや社内の事情に合わないことも、もっともらしい文章で書いてきます。ここさえ分かって使えば、事務の仕事はかなり楽になります。
よくあるのは、営業担当の方が取引先へのお詫びメールを書くのに30分悩んでいる、という場面です。状況を3行で入力して下書きを出してもらい、言い回しを自分の言葉に直す。これだけで、書き始めの重さがずいぶん軽くなります。
反対にうまくいかないのは、「AIに聞けば正解が出る」と思って使う場合です。法律の解釈や最新の制度、自社の数字などは、AIが知らないか、古い情報のまま答えることがあります。調べものの最終確認は、公式の情報や社内の資料で行ってください。
業務別の使い方
使いやすいのは、文章を書く、まとめる、整える、案を出す、といった作業です。業務ごとに、頼み方と人が確認するところを並べると次のようになります。
| 業務 | 頼み方の例 | 人が確認すること |
|---|---|---|
| メールの返信 | 問い合わせ文と伝えたい要点を渡して下書き | 約束していない内容が入っていないか |
| 会議メモ | メモを貼って決定事項と宿題を整理 | 担当者と期限が合っているか |
| 社内文書 | 箇条書きから案内文や手順書の形に | 社内の決まりと食い違いがないか |
| 企画・アイデア出し | 条件を伝えて案を10個ほど出させる | 実現できるか、似た例がないか |
| 表やデータの整理 | バラバラの住所録を項目ごとに並べ替え | 件数や数字が変わっていないか |
経理の方なら、取引先ごとにばらばらな書式で届いた請求の一覧を、同じ項目に並べ直す作業にも使えます。ただし金額は必ず元の書類と突き合わせてください。並べ替えの途中で数字が変わってしまうことが、まれにあります。
どの業務でも、AIの答えをそのまま使うことはありません。下書きの段階を速くして、人は確認と仕上げに時間を使う。この分担がいちばん効果が出やすいと思います。
頼み方のコツ
同じAIでも、頼み方で結果がかなり変わります。うまくいかないときは、たいてい情報が足りていません。次の点を入れて頼むと、手直しが少ない答えが返ってきやすくなります。
- 誰に向けた文章か(取引先、お客様、社内の新人など)
- 何のための文章か(お詫び、日程調整、手順の説明など)
- 長さや形(3行で、箇条書きで、表にして、など)
- 入れてほしいことと、入れてほしくないこと
- 参考にしてほしい過去の文面があれば、その例
悪い頼み方の例は「お詫びメールを書いて」の一言だけ、というものです。誰に、何があって、どこまで謝るのかが分からないので、どこにでも使えそうな当たり障りのない文章しか返ってきません。「納品が2日遅れた取引先の担当者に、原因と今後の対策を短く伝えるお詫びメール。言い訳がましくしない」と書けば、ぐっと使える下書きになります。
一度で完璧な答えを狙わなくて大丈夫です。「もっと短く」「敬語を少しやわらかく」と何度かやり取りして仕上げていくほうが、結果的に早く終わります。
入れてよい情報・入れない情報
生成AIに入れる情報は、「入れてよい」「条件付きで入れてよい」「入れない」の3段階で決めておくと、現場が迷いません。とくにお客様の個人情報や社外秘の資料は、使うサービスの設定と契約を確認してから扱いを決めます。
| 区分 | 例 | 扱い |
|---|---|---|
| 入れてよい | 公開済みの会社案内、一般的な文章の相談 | 自由に使ってよい |
| 条件付き | 社内向けの資料、名前を伏せた相談内容 | 会社が決めたサービスと設定でのみ |
| 入れない | お客様の氏名・連絡先、パスワード、守秘契約のある情報 | 原則として入力しない |
たとえば、お客様からの相談メールに返信したいときは、名前や会社名を「A様」「B社」に置き換えてから貼り付ければ、下書きは十分に作れます。このひと手間をルールに書いておくだけで、使える場面がかなり広がります。
誰かが入れない情報を入れてしまったときに、隠さずすぐ報告してもらえる雰囲気も欠かせません。報告が早ければ、履歴の削除や関係者への連絡といった手を早めに打てます。
「報告した人を責めない」とルールに一言書いておくだけでも違います。
注意
取引先との契約で、預かった情報を外部のサービスに入れることが禁じられている場合があります。AIの設定が安全かどうかとは別の話なので、気になる取引先の情報は契約書も確認してください。
AIの答えを確認するルール
AIが作ったものは、使う前に必ず人が確認する。これを社内ルールの真ん中に置きます。確認なしで安心して使える段階には、まだないと考えておいたほうが安全です。
確認のときに見るべきところは、業務の種類によって決まってきます。次のような点は、どの業務でも共通です。
- 数字、日付、金額、固有名詞が正しいか
- 自社が約束していないこと(値引き、納期、保証)を書いていないか
- 法律や制度について、断定的に書いていないか
- 他社の文章や画像をそのまま写したような部分がないか
- 相手に失礼な言い回しや、社内の言葉づかいと違う表現がないか
お客様に出す文書や、金額が入る書類は、作った人とは別の人がもう一度見るルールにしておくと安心です。社内メモのように影響が小さいものは、作った本人の確認だけで済ませてもいいと思います。全部を同じ重さで確認すると、それはそれで続きません。
ポイント
確認の重さは「間違えたときに誰が困るか」で決めます。お客様や取引先が困るものは2人で、社内だけで済むものは1人で、と分けておくと現場の負担が増えすぎません。
プランの選び方
業務で使うなら、個人が無料版をそれぞれ使うより、会社としてサービスとプランを決めて使うほうが安心です。ChatGPTやClaudeには法人向けのプランがあり、入力内容の扱いもプランや設定によって変わります。中身は公式の説明で確かめてください。
個人の無料アカウントをばらばらに使っていると、誰がどの情報を入れたのか、会社として把握できません。退職した人のアカウントに社内の資料が残っている、ということも起こりえます。
プランを選ぶときは、次のような点を比べます。
- 使う人数と使い方を決める全員が毎日使うのか、一部の担当者だけが使うのかで、向いているプランが変わります。
- 情報の扱いを確認する入力した内容が学習に使われるかどうか、設定で変えられるかを、公式の説明で確かめます。
- 管理のしやすさを見るアカウントの追加や削除を会社側でまとめて管理できるかを確認します。
- 小さく契約して試す最初は少人数で契約し、使われるようなら人数を増やします。
「とりあえず全員分を契約する」のは、あまりおすすめしません。使う場面が決まっていないまま契約すると、毎月の利用料だけがかかって、実際に使っているのは数人、ということになりがちです。使う業務を決めて、その担当の方から始めるほうが無駄がありません。
料金や機能は変わることが多いので、契約の前には各サービスの公式サイトで最新の内容を確認してください。
社内ルール文書に入れる項目
生成AIの社内ルールは、最初はA4で1〜2枚に収まる程度で十分です。分厚い規程を作っても読まれないので、現場の方が迷ったときに開いて、すぐ答えが見つかる形を目指します。
ルールを配るだけでなく、なぜその決まりがあるのかを社員の方に知ってもらうと守られやすくなります。私たちが運営しているAIセキュリティのeラーニング「AI Security Lab」では、生成AIを仕事で使うときの情報漏えいなどのリスクを学べるので、社内研修の材料にも使えます。
ルール文書に入れておきたい項目をチェックリストにしました。
- 使ってよいAIサービスとプラン(会社が契約したもの)
- 使ってよい業務の例と、使わない業務の例
- 入れてよい情報・条件付きの情報・入れない情報の区分
- 名前を伏せるなど、情報を入れるときの決まった手順
- AIの答えを確認する人と、確認する点
- お客様に出す文書でAIを使ったときの扱い
- 迷ったときや、誤って情報を入れてしまったときの相談先
- ルールを見直す時期と担当者
最後の「見直す時期」は必ず入れておきましょう。AIのサービスは機能も設定も変わりやすく、半年前に作ったルールが今の画面と合わない、ということがよくあります。
ルールは経営者1人で決めず、実際に使う現場の方にも意見を聞くのがおすすめです。「この情報は入れられないと仕事にならない」といった声が出てきたら、名前を伏せる手順を決めるなど、使える形を一緒に考えます。
現場が納得していないルールは、まず守られません。
ルールは禁止事項ばかりにしないのもコツです。「これはやってよい」「こういう使い方がおすすめ」という例が書いてあると、現場の方は安心して使い始められます。
社内に定着させる方法
定着させるには、ルールを配るだけで終わらせず、実際の業務で使う場面を1つ決めて、みんなで試すところから始めます。使い方が分からないまま「自由に使っていい」と言われても、忙しい現場ではなかなか手が伸びません。
- 使う場面を1つ決めるたとえば「会議メモの整理は必ずAIで下書きする」のように、具体的な作業を決めます。
- 使い方の見本を共有するうまくいった頼み方の文面を、社内のチャットや共有フォルダに貼っておきます。
- 短い勉強会を開く実際の業務の題材で、目の前で使ってみせる時間を30分ほど取ります。
- 困りごとを集めるうまくいかなかった例や、ルールで迷った点を集めて、ルールや見本を直します。
地味ですが、見本の共有はよく効きます。総務の方が作った「お知らせ文の頼み方」を貼っておくと、ほかの部署の方もそれを少し変えるだけで使えるようになります。年末の休業案内や健康診断のお知らせのように、毎年同じ時期に書く文書から見本をそろえていくと、使う場面が自然に増えていきます。
定着したかどうかは、数か月たったころに確かめます。決めた場面で実際に使われているか、使っていない人はなぜ使っていないのか。理由を聞くと、「頼み方が分からない」「確認のほうが手間」など、直せる理由が見つかることが多いです。
反対に、詳しい人だけが使い込んで、ほかの人はまったく使っていない状態も起こりがちです。詳しい人に頼み方の見本を書いてもらうなど、知っていることを社内に回す役を頼むとうまく回り始めます。
費用の目安と進め方
ChatGPTやClaudeを使うだけなら、各サービスの利用料だけで始められます。そのうえで、社内の資料を読ませたAIチャットを作りたい、メールや書類の作業を自動でつなげたい、という段階になると、仕組みづくりが必要になります。
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