受発注のFAX・電話が減らないのはなぜか
FAXや電話の注文が残るのは、送る側の取引先にとって、それがいちばん手間のかからない方法だからです。受ける側がどれだけ困っていても、取引先の手間が増える変え方は長続きしません。
注文する側から見ると、FAXは紙に書いて送るだけ、電話はかけて話すだけ。ログインもパスワードもいりません。長年それで回ってきたなら、わざわざ変える理由がないんです。
その分、受ける側の負担は目に見えにくいところに積もっていきます。次のうち、思い当たるものはいくつあるでしょうか。
- 朝、複合機の前で夜のうちに届いたFAXを取引先ごとに仕分けている
- 手書きの数字が読めず、取引先に電話で確かめることがある
- 電話で受けた注文をメモに書き、あとから受注の表に打ち直している
- 同じ注文がFAXと電話の両方で届き、二重に手配しかけたことがある
- 「先週頼んだあれ、どうなってる?」と聞かれて、紙の束を探す
- 担当者が休むと、どの注文がどこまで進んでいるか誰にも分からない
FAXの注文が多い会社ほど、こうした手間を当たり前の仕事として受け止めていることが多いです。毎朝の仕分けに何分かかっているか、一度だけ計ってみると、思っていたより長くて驚くかもしれません。
チェックが半分を超えるなら、受け方を見直す価値は十分にあると思います。
よくあるのが電話注文の聞き間違いです。営業の方が移動中に電話を受け、品番と数量を手帳に書く。事務所に戻って事務の方に伝えるとき、よく似た品番を取り違える。出荷したあとで気づき、引き取りと再出荷で一日がつぶれてしまう。
こうした出来事は、誰かの不注意というより、受け方の仕組みから起きています。人を責めても減りません。
最初にやるのは、注文の届き方を一覧にすること
新しい仕組みを入れる前に、どの取引先から、何で、どのくらいの頻度で注文が来ているかを一覧にします。これだけで、どこから手をつけるべきかがほぼ決まります。
1か月分のFAXと電話のメモを取引先ごとに数えるくらいで十分です。きっちり集計しなくても、「この数社で大半を占めている」「この会社は毎日少しずつ頼んでくる」といった傾向が見えてきます。
数えるときは、打ち直しや確認の電話が起きた注文にも印をつけておくと、ミスの多い相手がはっきりします。紙の端に丸をつけるだけで構いません。
| 届き方 | よくある困りごと | 向いている変え方 |
|---|---|---|
| 手書きのFAX | 数字が読めない、打ち直しが要る | 注文フォームかFAXの読み取り |
| Excelで作ったFAX・PDF | 形は整っているが打ち直しが要る | 読み取りの自動化 |
| 電話 | 聞き間違い、記録が残らない | 公式LINEか注文フォーム |
| メール本文 | 書き方が人によってばらばら | 決まった形の注文フォーム |
一覧ができたら、件数の多い取引先と、ミスが起きやすい取引先に印をつけます。変えてもらう相手はこの中から選びます。
全社を一度に変えようとしないこと。遠回りに見えて、結局これがいちばん早いです。
ポイント
件数の多い数社が変わるだけで、FAXと電話の量は目に見えて減ります。残りの小口の取引先は、FAXのままでも、受けたあとの手間を減らせば十分なことが多いです。
注文の受け方を変える方法は4つ
選べる方法は、Webの注文フォーム、公式LINE、既製の受発注サービス、FAXやPDFの読み取りの4つです。取引先がふだん何を使って仕事をしているかで選ぶと、切り替えがうまくいきやすくなります。
| 方法 | 取引先の手間 | 向いている相手 |
|---|---|---|
| Webの注文フォーム | URLを開いて入力するだけ | パソコンで仕事をする会社 |
| 公式LINE | いつものLINEで送るだけ | 現場や店舗からスマホで頼む人 |
| 既製の受発注サービス | アカウントの登録が要る | 業界ですでに広く使われている場合 |
| FAX・PDFの読み取り | 今までと変わらない | どうしても変えられない相手 |
Webの注文フォーム
取引先ごとに専用のURLを渡し、品番と数量を選んで送ってもらう形です。品番を一覧から選ぶようにすれば、書き間違いはまず起きません。
前回と同じ注文をボタン一つで出せるようにしておくと、取引先にも喜ばれます。毎回ほぼ同じものを頼む相手ほど、この差は大きいです。
注文が届いたら、受け付けた内容を自動で返信するようにしておくのもおすすめです。取引先は届いたかどうかを電話で確かめなくてよくなり、こちらも「送った」「届いていない」の行き違いを避けられます。
公式LINE
職人さんや店舗のスタッフなど、パソコンを開かない相手にはLINEがいちばん受け入れられやすいです。トークの中で品番と数量を順に聞き取る形にすれば、電話と同じ感覚で注文できて、記録も残ります。
作り方の考え方はLINEで問い合わせを自動化する方法でも書いています。
既製の受発注サービス
業界によっては、受発注のクラウドサービスが広く使われています。取引先がすでに使っているなら、それに合わせるのが一番早い。
反対に、取引先に新しく登録してもらう必要がある場合は、お願いのハードルが一段上がります。使う側の手間が増える分、相手を選ぶ方法です。
FAX・PDFの読み取り
取引先には今まで通りFAXやPDFで送ってもらい、受けた側でAIに読み取らせて受注の表に入れる方法です。相手に何もお願いしなくていいのが一番の強みです。詳しくは注文書のデータ化をAIで進める方法にまとめています。
注文フォームやLINEで聞く項目は、今のFAX用紙から決める
注文の画面で聞く項目は、いま取引先が使っているFAX用紙や電話でのやり取りを、そのまま写すところから決めます。新しく考えるより、慣れた並びのほうが取引先も迷いません。
FAX用紙を何枚か机に並べると、どの取引先も書いている項目と、一部の取引先だけが書いている項目に分かれます。全員が書いている項目は必ず聞き、一部だけのものは自由に書ける欄にまとめます。
- 取引先名と、注文した人の名前
- 品番と数量(品番は一覧から選ぶ形にする)
- 希望の納品日と納品先
- 現場名や、伝票に載せたい番号
- そのほかの連絡事項
項目を増やしすぎると、取引先は途中で面倒になって電話に戻ってしまいます。迷ったら減らす。足りなければ、使い始めてから足せば十分です。
電話で注文を受けている事務の方に、いつも何を聞き返しているかを聞いてみるのもおすすめです。納品先の住所、急ぎかどうか、代わりの品でもよいか。聞き返しの多い項目を最初から画面で聞いておけば、確認の電話がそのぶん減ります。
取引先に切り替えをお願いするときの進め方
お願いは、付き合いの長い1社か2社から始め、相手にとっての得を先に伝えます。「こちらが楽になるので」と言われて、自分の手間を増やしたい取引先はいません。
相手にとっての得は、意外と多いものです。送ったかどうかの確認電話がいらない。過去の注文を相手も見返せる。夜や休みの日でも気兼ねなく送れる。こうした点から話すと、ずっと通りやすくなります。
- 話しやすい1社に相談するいきなり全社に案内を出さず、気心の知れた担当者に「試しに使ってみてほしい」と頼みます。
- 使ってもらって直す入力しにくい項目や分かりにくい言葉を聞き、画面を直します。最初の1社の感想がいちばん役に立ちます。
- 件数の多い取引先に案内する使い方を紙1枚にまとめ、訪問や電話のついでに渡します。すでに使っている会社がある話をすると安心してもらえます。
- しばらくはFAXや電話も受け続ける切り替えの途中で注文を断ることはしません。両方を受けながら、少しずつ新しい方法に寄せていきます。
注意
「来月からFAXは受け付けません」といった一方的な案内は、取引先との関係を傷つけます。値上げの連絡と同じくらい気をつかう話だと考えて、相手の都合を聞きながら進めてください。
案内の紙には、問い合わせ先と「分からなければ今まで通り電話で大丈夫です」の一言を入れておくと、受け取る側の気持ちがずいぶん楽になります。
FAXや電話を残す取引先への対応
どうしても切り替えられない取引先は必ず残ります。そういう相手には無理をお願いせず、受けたあとの手間を減らすほうに力を使います。
FAXは、複合機の設定で紙に印刷せず、PDFとしてメールや共有フォルダに届くようにできる機種が多いです。PDFで受けられれば、AIでの読み取りにそのまま回せます。紙を仕分ける朝の作業もなくなります。
読み取った内容は、受注の表にいきなり登録せず、人が画面で確かめてから確定する形にしておきます。元のFAXと読み取り結果を並べて見られるようにすると、確認はかなり楽です。
読み取りの仕組みは、最初から全部の取引先に使う必要はありません。FAXの多い1社の注文書で始め、読み取りの癖を確かめてから広げると、確認にかかる手間の見通しも立てやすくなります。
電話の注文は、受けた人がその場で入力できる画面を用意するだけでも変わります。メモから打ち直す作業がなくなりますし、話を聞きながら品番を一覧から選ぶので、聞き間違いにもその場で気づけます。
電話の多い取引先には、受けた内容をLINEやメールで送り返すだけでも効果があります。聞き間違いを、その日のうちに相手に見つけてもらえるからです。
注意
AIの読み取りは、きれいに印字された注文書ほど正確で、癖の強い手書きは読み違えることがあります。金額や数量は、確定する前に必ず人が見る流れにしてください。
注文を受けたあとの転記もなくす
受け方を変えたら、その注文データを出荷の指示や請求書まで、打ち直さずにつなげます。ここまでやって、ようやく事務の手間がはっきり減ります。
注文フォームに変えたのに、届いたメールを見て在庫表と出荷表と請求の表にそれぞれ打ち込んでいる。これだと、紙がメールに変わっただけです。注文が一度入れば、出荷の予定、納品書、月末の請求書まで同じデータから作れる形を目指します。
在庫を持っている会社なら、注文が入った時点で在庫表の数も動くようにしておくと、在庫があると思って受けたら足りなかった、という事故も減らせます。出荷の担当と事務の担当が別々の表を見ている状態をなくすのが目当てです。
月末の請求書づくりで、FAXの束を1枚ずつめくり、取引先ごとに数量を拾い直している会社は少なくありません。注文がデータで残っていれば、締め日に取引先ごとの一覧を出すだけで済みます。
請求の流れは請求書の発行を自動化する方法、打ち直しの見つけ方は転記をなくす方法で詳しく書いています。
LaughRallyの事例
事務員のいない外構工事会社で、現場台帳と見積・発注・請求の情報をひとつにまとめ、公式LINEとつなぎました。現場ごとの情報が1か所にあるので、発注や請求のたびに別々の表を開かずに済む形にしています。
費用の目安と進め方
注文の受け方を変えるなら、1つの取引先、1つの流れから小さく始めるのがおすすめです。LaughRallyでは、注文フォームや公式LINEでの受注、FAXの読み取りといった1業務の自動化を3万〜5万円から承っています。
受注から出荷、請求までをひとつの仕組みにまとめる場合は、業務システムとして50万円からが目安です。どこまでを一度に作るかで金額は変わります。件数の多い流れだけを先に作り、使われたら広げていくほうが、無駄な機能にお金をかけずに済みます。
作ったあとも、取引先が増えたり品番が変わったりと手直しは出てきます。そうした細かな変更は、月額の伴走支援(月5万〜15万円)でまとめてお受けしています。
どこから変えるとよいか分からないときは、無料の業務診断(60分・オンライン)で、注文の届き方を一緒に整理します。おおよその金額だけ先に知りたい場合は、見積もりシミュレーターで概算を出せます。