補助金でシステムを入れるとき、最初に決めること
最初に決めるのは「何の業務を、どう変えたいか」です。どの補助金を使うかは、その後で構いません。
目的が曖昧なまま制度から選ぶと、使われないシステムに補助金と自己負担の両方を払うことになりかねません。
よくあるのは、商工会や取引先から「今年はこの補助金が出るらしい」と聞いて、締切から逆算して慌てて相談に来るケースです。気持ちはよく分かります。
ただ、その時点で「見積から請求までを1つの画面で回したい」くらいの目的が言えるかどうか。ここで、その後の進み方がまるで違ってきます。
目的が決まったら、次の順番で考えると迷いにくいです。
- 困っている業務を1つ書き出す誰が、週に何回、どの書類やファイルで手間をかけているかを紙1枚に書きます。
- 既製のツールで足りるか考える市販のクラウドサービスで済むのか、自社の流れに合わせた開発が必要なのかを分けます。
- 合う補助金を探す国、都道府県、市区町村の制度を並べ、作りたいものが対象になるかを公募要領で確かめます。
- スケジュールと自己負担を確認する交付決定の時期、事業の期間、支払いのタイミングを見て、資金繰りに無理がないかを見ます。
既製ツールで足りるか、開発が必要か
この見極めは、使える補助金を決めるうえでも大きな分かれ目です。会計や勤怠のように、どの会社でも流れがほぼ同じ業務は、既製のクラウドサービスで足りることが多いです。
現場ごとに見積の組み方が違う、紙の台帳と独自の書式で回してきた、といった業務は事情が違います。既製ツールに合わせると、現場の手間がかえって増えることがあるんです。
こういう場合は、自社の流れに合わせて作る開発を検討します。どちらが向くか自信がなければ、両方の前提で開発会社に相談してみるのも手です。
システム導入に使える主な補助金の種類
システム導入でよく名前が挙がるのは、国の「デジタル化・AI導入補助金」、東京都の「DX推進トータルサポート事業」、それに各自治体の独自の補助金です。対象になる経費は制度ごとに違うので、作りたいものが入るかどうかを公募要領で確かめてから選びます。
| 制度 | 向いているもの | 気をつける点 |
|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金(国) | 登録済みの既製ツールの導入 | 独自の開発や大幅なカスタマイズは対象外 |
| DX推進トータルサポート事業(東京都) | 計画づくりから導入まで進めたい都内の会社 | 対象経費は要項で確認 |
| 自治体の独自補助金 | 地域の会社のIT化や設備導入 | 要件や対象経費が自治体ごとに違う |
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)
旧IT導入補助金から名称が変わった国の制度です。事務局に登録された支援事業者が提供する、登録済みのITツールを導入する費用が対象とされています。
誤解が多いのは、オーダーメイドの開発です。ゼロから作るスクラッチ開発や大幅なカスタマイズは対象外とされていて、自社専用のシステムを作る費用にはこの制度は使えないと考えておいたほうが安全です。
既製のツールを入れるならこの制度、自社の流れに合わせて作るなら別の制度や自己資金、と分けて考えると整理しやすくなります。対象になるツールや経費は年度で変わるので、公式サイトと公募要領で確認してください。
東京都のDX推進トータルサポート事業
東京都の事業で、アドバイザーの支援を受けながらDXやAI活用の計画を作り、その計画にもとづく導入費用の一部を助成する仕組みとされています。生産性向上コースは、助成上限1,500万円、助成率1/2(小規模事業者は2/3)と案内されています。金額や率も年度で変わりうるので、公募要領で確認してください。
計画づくりから入れるので、「何から手をつければいいか分からない」段階の会社とは相性がいいと感じます。ただ、自社専用の開発が対象経費に入るか、申請できる会社の条件、申請の時期などは、公式サイトと募集要項で必ず確認してください。
自治体の独自補助金
県や市区町村が、地域の中小企業向けに独自の補助金を出していることもあります。国の制度ほど知られていないぶん、条件が合えば狙い目です。役所のホームページや商工会、地元の金融機関に聞くと見つかりやすく、対象経費は各自治体の公募要領で確かめます。
注意
補助金の名称、上限額、対象経費、締切は年度ごとに変わります。この記事は2026年10月時点の公開情報をもとに書いていますが、申請前には必ず最新の公募要領と公式サイトを読んでください。
補助金ありきで機能を盛らない
補助金があるからといって、使わない機能まで足すのはやめたほうがいいです。補助されるのは費用の一部で、残りは自己負担。作った機能の保守費も、補助が終わったあと毎月かかります。
たとえば、もともと「現場の写真と日報をまとめたい」だけだった会社が、上限額いっぱいまで使おうとして在庫管理や勤怠管理まで載せたとします。現場の方が覚える画面は一気に増えて、結局よく使うのは日報の画面だけ。こういう話は珍しくありません。
機能を決めるときは、次の問いに答えられるかを確かめてみてください。
- その機能を毎週使う人の名前が言える
- 今その作業にどれくらい手間がかかっているか説明できる
- 補助金がなくても、いずれ欲しいと思っている
- 公開後の保守費や月額費を、自社の予算で払い続けられる
開発会社の側から「補助金が出るならこれも入れましょう」と提案されることもあると思います。そのときは、その機能が無かった場合に現場で何が困るのかを聞き返してみてください。答えが具体的に返ってこない機能は、後回しで構いません。
全部にうなずけない機能は、いったん外しておきます。使ってみて必要になったら、あとから足せばいいんです。
ポイント
補助金の上限額は「ここまで使える」という天井で、目標ではありません。必要な機能だけで見積もって、上限より安く済むならそれがいちばんです。
スケジュールと「交付決定前の発注」に注意する
補助金を使うときにいちばん気をつけたいのは、発注や契約のタイミングです。交付決定の前に結んだ契約や発注は対象にならない、と定めている制度が多く、急いで動いた結果、全額自己負担になることがあります。
「早く始めたいから先に契約だけ」と考える方は少なくありません。ですが、ここは公募要領をよく読んで、どの時点から発注してよいのかを確認してから動いてください。制度によって決まりが違うので、開発会社とも日付を共有しておくと安心です。
大まかな流れは、どの制度でも似ています。
- 公募要領を読む対象者、対象経費、締切、事業期間、必要書類を確認します。
- 要件と見積書をそろえる開発会社と作りたいものを整理し、申請に添付する見積書を作ってもらいます。
- 申請する事業計画書などを提出します。電子申請の準備に時間がかかる制度もあるので、締切ぎりぎりは避けます。
- 交付決定を待ついつから契約や発注をしてよいかは公募要領で確認し、それまでは動かないのが基本です。
- 契約・開発・支払い事業期間内に開発を終え、支払いまで済ませます。
- 実績報告と入金報告書を出して確認を受けたあとに補助金が振り込まれます。
見落としやすいのが最後の段階です。補助金は後払いの制度が多く、開発費をいったん全額自社で払う前提になります。支払いの時期は公募要領で確かめ、入金までの資金繰りを計画の段階で見ておきましょう。
事業期間にも注意が要ります。期間内に開発と支払いを終える必要がある制度では、開発会社のスケジュールが空いているかも欠かせない確認事項です。仕様が途中で大きく変わると間に合わなくなるので、申請前に作るものをある程度固めておくほうが安全です。
申請に出す見積書の書き方
申請に使う見積書は、審査する人が読んで「何に、いくら使うのか」が分かるように書くのが基本です。「システム開発一式」のようにまとめてしまうと、どの部分が補助の対象なのか判断しにくくなります。
開発会社に見積書を頼むときは、次の点を伝えておくとやり取りが減ります。
- 使う予定の補助金の名前と、公募要領で決められた書式や記載事項
- 機能ごとに金額を分けて書いてほしいこと
- 保守費や月額費など、補助の対象外になりそうな費用を分けてほしいこと
- 見積書の日付や有効期限の扱い
- 相見積もりが必要な制度かどうか
機能の名前も、専門用語より業務の言葉で書いたほうが伝わります。「顧客DB」より「顧客情報と過去の見積を一覧で見る画面」のほうが、事業計画書の内容ともつながりやすいはずです。
依頼の時期も早めが安心です。締切の3日前に「見積書だけ急ぎで」と頼まれることがありますが、要件が固まらないまま出した見積書は、交付決定後に中身を変えにくくなります。
事業計画書と見積書は、同じ中身を別の角度から書いたものです。両方を並べて読み合わせる時間を、少なくとも1週間はとっておいてください。
ポイント
見積書の機能名と、事業計画書に書く「解決したい課題」を1対1で対応させておくと、審査する人にも、あとで実績報告を書く自分たちにも分かりやすくなります。
採択されなかったときの計画も先に作っておく
補助金は申請すれば必ず通るものではないので、採択されなかった場合にどうするかを申請前に決めておきます。「通らなかったら全部やめる」のか、「規模を小さくして自費で始める」のかで、最初の計画の立て方が変わるからです。
おすすめは、作るものを段階に分けておくことです。
| 段階 | 内容 | 不採択のとき |
|---|---|---|
| 第1段階 | いちばん困っている1業務だけ | 自費で小さく始める |
| 第2段階 | 関連する業務につなげる | 第1段階の効果を見て判断 |
| 第3段階 | LINE連携や分析など | 次の公募や別の制度を検討 |
こうしておけば、不採択でも第1段階だけは予定どおり進められます。次の公募に出し直すときも、実際に使ってみた結果を事業計画に書けるので、説得力のある申請になりやすいと思います。
第1段階をどこにするかは、毎日いちばん時間を取られている作業から選ぶのが無難です。たとえば事務の方が毎晩1時間かけて現場ごとの見積をExcelから転記しているなら、そこが第1段階の候補になります。小さく始めても、効果が見えれば第2段階の判断がしやすくなります。
反対に、補助金が出る前提で取引先と納期を約束してしまうのは危険です。結果が出るまでは、補助金がなくても回る計画を持っておきましょう。
費用の目安と進め方
LaughRallyの料金の目安は、1業務の自動化が3万〜5万円(1〜2週間)、業務システム・SaaS開発が50万円から(1〜3か月)です。補助金を使うかどうかに関係なく、まず必要な機能だけで見積もり、そのうえで対象になる制度があるかを公募要領で一緒に確かめる順番にしています。
開発中は途中で動く画面を見せながら進めるので、事業期間の途中で「思っていたのと違う」となりにくいのも、補助金の案件では助かる点です。大きな開発は提携の開発パートナーと体制を組みますが、窓口はLaughRallyがひとつで担当します。
「この業務は補助金を使うほどの規模なのか」「既製のツールで足りるのか」が分からない段階でも構いません。無料の業務診断(60分・オンライン)で、自動化できる業務を一覧にしてお渡しします。
売り込みはしません。おおよその金額を先に知りたい場合は、見積もりシミュレーターも使ってみてください。